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4.本書の基本的立場
前節でモダリティに対する多様な考え方を概観した。ここでは,本書の基本的立場を述べる。
4.1.モダリティ論,モダリティの定義および考察対象
すでに述べたように,本書は,従来の研究を踏まえつつも,原点に立ち帰って必要最小限の範囲で日本語モダリティを再考してみたい。したがって,筆者なりのモダリティ論は,現在模索中であると言うことになる。
本書では,モダリティの定義を次のように規定する。
モダリティとは,話し手が事態や命題,聞き手に関わっている様式,あるいは,主体が動作や状態に関わっている様式を表すものである。
なお,本書では,考察対象を有標的な文末形式のみに限定している。
4.2.多義性と多義的アプローチ
3.4節で述べたように,日本語に「う」や「まい」のような,多義的なモダリティ表現があるので,本書では,日本語のモダリティ表現の多義性を認めている。さらに,こうした多義的なモダリティ表現は,モダリティの可能な「意味の型」を示してくれるので,日本語モダリティの体系の構築に役立つと考えている。たとえば,「う」の「話し手の意志,決意を表わす」の意味,「相手に対する勧誘,または命令的な意を表わす」の意味,「現在,または未来の事柄について,話し手の推量を表わす」の意味は,dynamicな意味,deonticな意味,epistemicな意味,という3種類の「意味の型」を示してくれる。このような「意味の型」は,日本語モダリティの分類の参考となる。
また,本書では,モダリティ表現の意味分析にあたって,多義的アプローチをとる。